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消費税減税の議論で改めて確認したいインボイス制度|買手側の仕入税額控除と経過措置

2026.05.27

消費税の減税や食料品の税率をめぐる議論をきっかけに、改めて「消費税の仕組み」や「インボイス制度」に関心を持つ方も増えています。

ただ、事業者にとっての消費税は、税率だけでなく、売上にかかる消費税、仕入れや経費にかかる消費税、そしてインボイスの保存による仕入税額控除まで含めて整理する必要があります。

今回のインボイス制度シリーズでは、事業者の方が気になりやすいポイントを、2回に分けて整理します。1本目では、買手側、つまり仕入れや経費を支払う側から見た仕入税額控除と経過措置を確認します。2本目では、売手側、つまりインボイス登録後に売上にかかる消費税をどう申告するかを整理します。

この記事は、その1本目です。まずは買手側、つまり仕入税額控除を受ける事業者側の視点から、免税事業者等からの仕入れに関する経過措置と、実務上の確認ポイントを整理します。

インボイス制度は、買手側と売手側で確認ポイントが変わります

インボイス制度は、令和5年10月1日から始まりました。

インボイス制度は、消費税を正しく計算するために、適用税率や消費税額などが記載された請求書・領収書等、いわゆるインボイスをもとに処理する仕組みです。

事業者が消費税を計算する場面では、大きく分けると、売上にかかる消費税と、仕入れや経費にかかる消費税の両方を確認する必要があります。

買手側から見ると、インボイス制度は、仕入れや経費について仕入税額控除を受けるための制度です。一方で、売手側から見ると、インボイスを発行し、売上にかかる消費税を申告する立場になる制度でもあります。

この2つは、同じインボイス制度に関係しますが、確認すべき内容が異なります。

  • 買手側:仕入れや経費について、どこまで仕入税額控除を受けられるか
  • 売手側:インボイス登録後、売上にかかる消費税をどのように申告するか

この記事では、まず買手側の視点から、免税事業者やインボイス発行事業者以外の者から仕入れを行った場合の経過措置を整理します。

なお、この記事では、現在議論されている消費税率の見直しそのものではなく、現行制度として事業者が確認しておきたいインボイス制度と仕入税額控除の経過措置を整理します。

そもそも仕入税額控除とは

消費税は、売上に係る消費税額から、仕入れや経費に係る消費税額を差し引いて納付税額を計算する仕組みです。

この「仕入れや経費に係る消費税額を差し引くこと」を、仕入税額控除といいます。

インボイス制度のもとでは、仕入税額控除を受けるために、原則としてインボイスの保存が必要です。インボイスがない仕入れや経費については、原則として仕入税額控除ができません。

ただし、制度開始後の一定期間については、免税事業者などインボイス発行事業者以外の者からの仕入れについても、一定割合を控除できる経過措置が設けられています。

ここで大切なのは、買手側の仕入税額控除の話と、売手側の消費税申告の話を分けて考えることです。

今回の記事で扱うのは、主に買手側の話です。つまり、免税事業者等から仕入れや外注費などの支払いをした事業者が、どこまで仕入税額控除を受けられるか、という視点です。

一方、2割特例・3割特例は、インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった売手側の消費税申告に関係する制度です。

同じインボイス制度でも、買手側の仕入税額控除の話なのか、売手側の消費税申告の話なのかで、確認すべきポイントが変わります。まずは、この切り分けが出発点です。

経過措置は7割・5割・3割控除へ

令和8年度税制改正では、免税事業者などインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が見直されました。

当初は、令和5年10月から3年間は80%控除、令和8年10月から3年間は50%控除、その後は控除不可という流れでした。

令和8年度税制改正により、この経過措置は見直され、令和8年10月以後は70%、50%、30%と段階的に控除割合が下がる形になりました。

インボイス経過措置の見直しの流れ

免税事業者等からの仕入れについては、一定期間だけ、仕入れや経費にかかる消費税の一部を差し引ける経過措置が設けられています。

令和8年度税制改正後は、令和8年10月以後の控除割合が、70%、50%、30%へ段階的に変わります。

令和5年10月〜令和8年9月

80%控除

インボイス制度開始後の最初の経過措置期間です。免税事業者等からの課税仕入れについて、一定の要件のもと、仕入れや経費にかかる消費税の80%相当を控除できます。

令和8年10月〜令和10年9月

70%控除

令和8年度税制改正により、令和8年10月から2年間は70%控除の期間になります。取引先に免税事業者等が多い場合は、ここから消費税負担への影響が出やすくなります。

令和10年10月〜令和12年9月

50%控除

控除割合が50%に下がる期間です。仕入先・外注先との取引状況、会計ソフトの消費税区分、納税資金への影響を早めに確認しておきたい時期です。

令和12年10月〜令和13年9月

30%控除

経過措置終了前の1年間は、30%控除の期間になります。免税事業者等との継続取引がある場合は、取引条件や経理処理を見直すタイミングになります。

令和13年10月以後

原則控除不可

経過措置の終了後は、免税事業者等からの課税仕入れについて、原則として仕入税額控除を受けられなくなります。継続的な取引先がある場合は、早めの整理が安心につながります。

このように、経過措置は一気になくなるのではなく、80%から70%、50%、30%へと段階的に縮小していきます。

ただし、控除できる割合が残っている期間であっても、これまでと同じ処理でよいとは限りません。会計ソフトの設定、取引先のインボイス登録状況、仕入先ごとの取引金額などを一度整理しておきたいところです。

令和8年10月以後は、会計処理の切り替えに注意

実務上、まず確認したいのは、令和8年10月以後に控除割合が変わる点です。

令和5年10月から令和8年9月までの経過措置では、免税事業者等からの仕入れについて80%控除が認められていました。

令和8年10月からは、控除割合が70%に変わります。割合が10%下がるだけに見えますが、免税事業者等との取引が多い会社では、消費税の納付額や経理処理に影響する可能性があります。

また、取引日だけでなく、課税期間や決算期によって確認すべきタイミングが変わる場合もあります。自社の事業年度に合わせて、いつから会計処理や税区分の設定を見直すべきか。ここは早めに確認しておくと安心です。

令和8年10月前後では、次のような点を確認しておきたいところです。

  • 免税事業者やインボイス未登録事業者との取引がどの程度あるか
  • 令和8年10月以後の会計ソフト設定が70%控除に対応しているか
  • 仕入先ごとのインボイス登録番号を確認しているか
  • 請求書・領収書・帳簿の保存状況に問題がないか
  • 消費税申告時に、経過措置対象の取引を区分できるか
  • 自社の決算期・課税期間に照らして、いつから処理を切り替えるべきか

経過措置の割合が変わるタイミングでは、会計ソフトや経理処理の設定ミスが起きやすくなります。取引量が多い会社ほど、月次処理の段階での確認が、申告時の安心につながります。

仕入れが総額1億円超の場合は注意

令和8年度税制改正では、経過措置の控除割合だけでなく、適用できる金額の上限にも見直しが入っています。

7割・5割・3割控除については、同じインボイス未登録の取引先などからの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年または事業年度で1億円を超える場合、その超えた部分については経過措置を適用できません。

この上限は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

中小企業では、すべての会社にこの上限が問題になるわけではありません。ただ、特定の外注先、仕入先、業務委託先との取引金額が大きい場合には、確認しておきたいポイントです。

たとえば、次のような場合は注意が必要です。

  • 特定の外注先や仕入先への支払いが大きい
  • 免税事業者との継続的な業務委託取引がある
  • インボイス登録の有無を取引先ごとに管理していない
  • 会計ソフト上で経過措置対象取引を区分していない
  • 同じ取引先への年間支払額が大きくなりやすい

取引先が多い場合や、特定の取引先への支払いが大きい場合は、経過措置の対象になるかどうかを取引先ごとに整理しておくと、消費税申告の準備がしやすくなります。

会計ソフトや経理処理で確認したいこと

インボイス制度の経過措置は、制度を理解するだけでなく、日々の経理処理に反映できているかが重要です。

会計ソフトを使っている場合でも、取引先の登録状況や税区分の設定が正しくなければ、経過措置の控除割合が正しく反映されないことがあります。

特に、令和8年10月以後は控除割合が80%から70%へ変わります。まず確認したいのは、会計ソフトの税区分と取引先の登録状況です。

確認項目 確認したい内容
取引先マスター インボイス登録番号の有無、免税事業者等との取引区分を管理しているか
税区分 経過措置対象の仕入れとして正しく処理できる税区分になっているか
会計ソフト更新 令和8年10月以後の70%控除、将来の50%・30%控除に対応しているか
証憑保存 請求書、領収書、帳簿など、経過措置の適用に必要な資料を保存しているか
申告前確認 経過措置対象取引を集計できる状態になっているか

経理処理は毎月積み上がっていくため、決算や申告の直前にまとめて確認しようとすると時間がかかります。月次処理の段階で取引先や税区分を整理しておくことが、後から見直す負担を減らす第一歩になります。

今後の免税事業者との取引について

経過措置の控除割合が段階的に下がるからといって、免税事業者との取引をすぐにやめるべき、という話ではありません。

取引先との関係、価格、サービス内容、継続的な取引の必要性などを踏まえて、事業上の判断として整理することが大切です。

一方で、消費税の負担や経理処理への影響を把握しないまま取引を続けると、申告時に想定よりも納税額が大きく感じられることがあります。ここは、数字で一度確認しておきたい部分です。

取引先との関係では、次のような点を確認しておくと整理しやすくなります。

  • 取引先がインボイス発行事業者かどうか
  • 免税事業者等との取引金額がどの程度あるか
  • 経過措置の割合低下により、消費税負担がどの程度変わるか
  • 価格交渉や取引条件の見直しが必要か
  • 取引先との関係性を踏まえ、急な見直しになっていないか

消費税だけを理由に取引を判断するのではなく、事業全体への影響を見ながら整理することが大切です。判断に迷う場合は、数字を確認したうえで、無理のない対応を考えていくとよいでしょう。

買手側の経過措置と、売手側の特例措置は分けて考える

ここまで整理した内容は、主に買手側の話です。

つまり、免税事業者等から仕入れや外注費などの支払いをした事業者が、どこまで仕入税額控除を受けられるかという視点です。

一方で、インボイス登録をした個人事業主や事業者にとっては、別の切り口で確認したい制度があります。

それが、2割特例や令和9年分・令和10年分の3割特例、簡易課税への移行です。

この2つは、同じインボイス制度に関係しますが、立ち位置が異なります。

  • 買手側:免税事業者等からの仕入れについて、どこまで仕入税額控除を受けられるか
  • 売手側:インボイス登録により課税事業者となった事業者が、消費税申告をどう考えるか

今回の記事では、買手側の仕入税額控除の経過措置を整理しました。

売手側の事業者の消費税申告については、次の記事で詳しく整理しています。

税理士に相談した方がよいケースとは

インボイス制度の経過措置は、控除割合だけを見れば単純に見えるかもしれません。

しかし、実際には、取引先の登録状況、会計ソフトの設定、請求書・帳簿の保存、消費税申告への影響までつながります。

次のような場合は、会社内だけで抱え込まず、早めに税理士へ確認しておくと安心です。

  • 免税事業者やインボイス未登録事業者との取引が多い
  • 令和8年10月以後の会計ソフト設定に不安がある
  • 経過措置対象の仕入れを正しく区分できているか分からない
  • 特定の外注先や仕入先への支払いが大きい
  • 消費税の納税額がどの程度変わるか確認したい
  • インボイス制度への対応を月次処理から整理したい
  • 取引先との条件見直しを検討している

自社の処理にどの部分が関係するのかを整理できれば、必要な対応も見えやすくなります。判断に迷う場合は、早めに整理しておくのが安心です。

まとめ

消費税の税率をめぐる議論が注目される中でも、事業者にとっては、インボイス制度と仕入税額控除の確認が重要です。

今回の記事では、インボイス制度シリーズの1本目として、買手側の仕入税額控除と、免税事業者等からの仕入れに関する経過措置を整理しました。

  • インボイス制度は、買手側と売手側で確認ポイントが変わる
  • 今回の記事は、主に買手側の仕入税額控除に関する内容
  • 令和5年10月から令和8年9月までは80%控除
  • 令和8年10月から2年間は70%控除
  • 令和10年10月から2年間は50%控除
  • 令和12年10月から1年間は30%控除
  • 令和13年10月以後は、経過措置が終了し、原則としてインボイスがない仕入れは仕入税額控除の対象にできない
  • 令和8年10月以後は、会計ソフトや税区分の設定確認が重要になる
  • 同じインボイス未登録の取引先などからの課税仕入れの合計額(税込み)が1億円を超える場合は、上限にも注意する
  • 売手側・事業者側では、2割特例・3割特例・簡易課税への移行も別途確認したい

インボイス制度の経過措置は、段階的に縮小していくため、今すぐ大きな問題にならなくても、時間が経つほど影響が出やすくなります。

取引先の登録状況や会計ソフトの設定を早めに確認しておくことが、消費税申告時の安心につながります。

インボイス制度・消費税の経理処理に不安がある方へ

賀数公認会計士・税理士事務所では、中小企業・個人事業主の方向けに、税務顧問やスポット相談を通じて、インボイス制度、消費税申告、会計ソフトの処理確認をサポートしています。

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公認会計士・税理士。BIG4での監査業務、中堅税理士法人での中小・上場企業税務を経て、福岡市を拠点に賀数公認会計士・税理士事務所を開業。中小企業・個人事業主の税務顧問、創業支援、融資・補助金・資金繰り、確定申告、相続税の相談に対応しています。

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