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消費税減税の議論で改めて確認したいインボイス制度|売手側の消費税申告と2割特例・3割特例・簡易課税

2026.05.27

消費税の減税や食料品の税率をめぐる議論をきっかけに、改めて「消費税の仕組み」や「インボイス制度」に関心を持つ方も増えています。

事業者にとってのインボイス制度は、買手側の仕入税額控除だけでなく、売手側としてインボイスを発行し、売上にかかる消費税をどう申告するかという点にも関係します。

今回のインボイス制度シリーズでは、事業者の方が気になりやすいポイントを、2回に分けて整理しています。1本目では、買手側から見た仕入税額控除と経過措置を確認しました。

この記事は、その2本目です。今回は売手側、つまりインボイス登録後に売上にかかる消費税を申告する事業者側の視点から、2割特例、3割特例、簡易課税への移行を整理します。

売手側では、インボイス登録後の消費税申告がポイント

インボイス制度は、令和5年10月1日から始まりました。

インボイス制度というと、買手側が仕入税額控除を受けるためにインボイスを保存する話として説明されることが多いです。

一方で、売手側にとっては、インボイス発行事業者として登録することで、売上にかかる消費税を申告・納付する立場になることが大きなポイントです。

特に、これまで免税事業者だった個人事業主や小規模な法人が、取引先との関係などを考えてインボイス登録をした場合、消費税申告をどの方法で行うかを確認する必要があります。

売手側で確認したい主な選択肢は、次の3つです。

  • 2割特例:一定の事業者について、納付税額を売上税額の2割にできる制度
  • 3割特例:令和9年分・令和10年分の個人事業者について、納付税額を売上税額の3割にできる制度
  • 簡易課税制度:売上税額に業種ごとのみなし仕入率を使って納付税額を計算する制度

この記事では、現在議論されている消費税率の見直しそのものではなく、現行制度として事業者が確認しておきたいインボイス登録後の消費税申告について整理します。

買手側の話と売手側の話を分けて考える

インボイス制度では、買手側と売手側で確認するポイントが異なります。

買手側では、免税事業者やインボイス未登録の取引先から仕入れや外注費などの支払いをした場合、どこまで仕入税額控除を受けられるかが問題になります。

これに対して、売手側では、自分がインボイス発行事業者として登録した後、売上にかかる消費税をどのように申告するかが問題になります。

  • 買手側:仕入れや経費について、どこまで仕入税額控除を受けられるか
  • 売手側:インボイス登録後、売上にかかる消費税をどの方法で申告するか

1本目では、買手側の仕入税額控除と、免税事業者等からの仕入れに関する経過措置を整理しました。

この記事では、売手側の立場から、2割特例、3割特例、簡易課税制度への移行を確認します。

2割特例とは

2割特例は、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった事業者について、消費税の納付税額を売上税額の2割にできる制度です。

通常の消費税申告では、売上にかかる消費税額から、仕入れや経費にかかる消費税額を差し引いて納付税額を計算します。

しかし、2割特例を使う場合は、売上にかかる消費税額をもとに、納付税額を簡便に計算できます。そのため、インボイス登録後の事務負担を抑えやすい制度といえます。

たとえば、次のような事業者にとって、2割特例は確認しておきたい制度です。

  • インボイス登録前は免税事業者だった
  • 取引先との関係でインボイス登録を行った
  • 消費税申告に慣れていない
  • 仕入れや経費の消費税区分を細かく集計する負担を抑えたい
  • まずは簡便な方法で消費税申告をしたい

ただし、2割特例を使えるかどうかは、インボイス登録の経緯や課税売上高などによって変わります。すべての事業者が使えるわけではないため、自社やご自身が対象になるかを確認する必要があります。

3割特例とは

令和8年度税制改正では、インボイス登録により免税事業者から課税事業者となった個人事業者について、令和9年分・令和10年分の消費税申告で、納付税額を売上税額の3割にできる特例が設けられています。

この3割特例は、個人事業者を対象とした制度です。法人は3割特例の対象にならない点に注意が必要です。

3割特例の主な確認ポイントは、次のとおりです。

  • 対象は個人事業者であること
  • インボイス登録により、免税事業者から課税事業者になったこと
  • 令和9年分・令和10年分の消費税申告に関係すること
  • 法人は3割特例の対象にならないこと
  • 基準期間の課税売上高など、適用要件を確認する必要があること

2割特例が終わる時期に近づくと、個人事業主の方は、3割特例を使うのか、簡易課税制度へ移行するのか、一般課税で申告するのかを検討する必要があります。

特に、インボイス登録後も売上規模が大きく変わっていない個人事業主の方は、令和9年分以後の申告方法を早めに確認しておくと安心です。

法人は3割特例の対象にならない

3割特例は、インボイス登録により免税事業者から課税事業者となった個人事業者を対象とする制度です。

そのため、法人については、3割特例を前提に消費税申告を考えることはできません。

法人の場合は、2割特例の適用期間が終わった後、原則として一般課税または簡易課税制度で申告することになります。

法人で確認したいのは、次のような点です。

  • 2割特例を使っていた場合、その後の申告方法をどうするか
  • 簡易課税制度を選択できるか
  • 簡易課税制度を選択した方が有利か
  • 一般課税で申告する場合、仕入れや経費の消費税区分を正しく管理できているか
  • 届出書の提出期限を過ぎていないか

法人では、3割特例に頼るのではなく、早めに簡易課税制度への移行や一般課税での処理を検討することが重要です。

簡易課税制度とは

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上に係る消費税額に、事業区分ごとのみなし仕入率を使って納付税額を計算する制度です。

一般課税では、売上にかかる消費税額から、仕入れや経費にかかる消費税額を実際に集計して差し引きます。

これに対して、簡易課税制度では、売上税額をもとに、業種ごとのみなし仕入率で仕入税額控除を計算します。そのため、実際の仕入れや経費のインボイスを細かく集計しなくても、消費税の納付税額を計算できます。

事業区分 主な内容 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業など 80%
第3種事業 製造業、建設業など 70%
第4種事業 その他の事業 60%
第5種事業 サービス業など 50%
第6種事業 不動産業 40%

簡易課税制度は、事務負担を軽くできる一方で、実際の仕入れや経費が多い事業者では、一般課税の方が有利になる場合もあります。

また、簡易課税制度は、いったん選択すると原則として2年間は継続適用が必要です。そのため、目先の申告だけでなく、今後の売上や経費の見通しも含めて判断することが大切です。

2割特例・3割特例後の簡易課税への移行

2割特例や3割特例を使った後は、次の課税期間以後の申告方法を確認する必要があります。

原則として、簡易課税制度を適用するには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

ただし、令和8年度税制改正では、2割特例や3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度の適用を受けようとする場合について、届出書の提出期限に関する移行措置が設けられています。

このため、2割特例・3割特例を使った後に簡易課税制度へ移行する可能性がある場合は、通常の届出期限だけでなく、移行措置の内容も確認する必要があります。

特に、次のような事業者は、早めに検討しておきたいところです。

  • 2割特例を使っている法人
  • 令和9年分・令和10年分に3割特例の対象となる可能性がある個人事業者
  • 仕入れや経費のインボイス管理に不安がある
  • 一般課税での消費税計算が負担になりそう
  • 今後の売上や経費の見通しが変わりそう

届出書の提出時期を過ぎてしまうと、希望する課税期間から簡易課税制度を使えない場合があります。申告方法の選択は、申告時期だけでなく、事前の届出期限も含めて確認することが重要です。

一般課税・簡易課税・特例のどれを選ぶべきか

インボイス登録後の消費税申告では、一般課税、簡易課税制度、2割特例、3割特例のどれがよいかを検討する場面があります。

ただし、どれが有利かは、事業者ごとの状況によって変わります。

たとえば、売上に比べて仕入れや経費が少ない事業者では、2割特例や3割特例、簡易課税制度の方が負担を抑えられる場合があります。

一方で、設備投資や仕入れが多い事業者では、一般課税の方が有利になる場合もあります。

判断するときは、次の点を確認すると整理しやすくなります。

  • 個人事業者か法人か
  • インボイス登録前は免税事業者だったか
  • 基準期間の課税売上高がいくらか
  • 売上に対して仕入れや経費がどの程度あるか
  • 設備投資や大きな支出の予定があるか
  • 簡易課税制度の事業区分がどれに該当するか
  • 届出書の提出期限に間に合うか

消費税の申告方法は、納税額だけでなく、日々の経理処理や資料管理にも影響します。金額面と事務負担の両方から確認することが大切です。

会計ソフトや経理処理で確認したいこと

インボイス登録後は、会計ソフトの設定や消費税区分も確認しておく必要があります。

2割特例や3割特例を使う場合でも、売上にかかる消費税額を把握する必要があります。また、簡易課税制度を使う場合には、売上を事業区分ごとに整理することが重要です。

会計ソフト上では、次のような点を確認しておきたいところです。

確認項目 確認したい内容
売上の税区分 10%、軽減税率8%、非課税、不課税などが正しく区分されているか
インボイス登録番号 請求書・領収書に登録番号など必要事項が記載されているか
申告方式 一般課税、簡易課税、2割特例、3割特例のどれで申告するか整理しているか
簡易課税の事業区分 複数の事業を行っている場合、売上を事業区分ごとに分けられるか
届出書の提出期限 簡易課税制度を選択する場合、必要な届出期限を確認しているか
納税資金 消費税の納付に備えて、資金繰りを確認しているか

特に、消費税は申告時にまとめて負担を感じやすい税目です。売上が入金された時点では消費税分も手元資金に含まれるため、納税時期までに資金を残しておく意識が必要です。

税理士に相談した方がよいケースとは

インボイス登録後の消費税申告は、単に「2割特例を使う」「簡易課税を選ぶ」といった話だけではありません。

事業者ごとの売上規模、経費の状況、設備投資の予定、個人か法人か、届出書の提出期限などによって、判断が変わります。

次のような場合は、早めに税理士へ確認しておくと安心です。

  • インボイス登録後、初めて消費税申告を行う
  • 2割特例を使えるかどうか分からない
  • 令和9年分・令和10年分の3割特例の対象になるか確認したい
  • 法人で、2割特例後の申告方法に不安がある
  • 簡易課税制度を選ぶべきか迷っている
  • 設備投資や大きな経費がある
  • 会計ソフトの消費税区分や請求書の記載内容に不安がある
  • 消費税の納税資金をどのように準備すればよいか確認したい

消費税申告は、申告書を作る段階だけでなく、日々の経理処理や届出書の提出期限からつながっています。判断に迷う場合は、早めに整理しておくことが大切です。

まとめ

消費税の税率をめぐる議論が注目される中でも、事業者にとっては、インボイス登録後の消費税申告を確認しておくことが重要です。

今回の記事では、インボイス制度シリーズの2本目として、売手側の消費税申告と、2割特例、3割特例、簡易課税制度への移行を整理しました。

  • インボイス制度は、買手側と売手側で確認ポイントが変わる
  • 売手側では、インボイス登録後の消費税申告が重要になる
  • 2割特例は、一定の事業者について納付税額を売上税額の2割にできる制度
  • 3割特例は、令和9年分・令和10年分の個人事業者に関係する制度
  • 法人は3割特例の対象にならない
  • 簡易課税制度は、売上税額にみなし仕入率を使って納付税額を計算する制度
  • 簡易課税制度は、選択後、原則として2年間の継続適用が必要
  • 2割特例・3割特例後の簡易課税への移行では、届出書の提出期限を確認する必要がある
  • どの方法がよいかは、売上規模、経費、設備投資、個人か法人かによって変わる

インボイス制度への対応は、一度登録して終わりではありません。登録後の消費税申告、会計ソフトの設定、請求書の記載、納税資金の準備まで含めて確認する必要があります。

自社やご自身にとってどの申告方法がよいか分からない場合は、早めに状況を整理しておくと安心です。

インボイス登録後の消費税申告に不安がある方へ

賀数公認会計士・税理士事務所では、中小企業・個人事業主の方向けに、税務顧問やスポット相談を通じて、インボイス登録後の消費税申告、2割特例・3割特例、簡易課税制度の選択、会計ソフトの処理確認をサポートしています。

「2割特例や3割特例を使えるか分からない」「簡易課税制度を選ぶべきか迷っている」「インボイス登録後の消費税申告を整理したい」という場合は、関連サービスをご確認ください。

公認会計士・税理士。BIG4での監査業務、中堅税理士法人での中小・上場企業税務を経て、福岡市を拠点に賀数公認会計士・税理士事務所を開業。中小企業・個人事業主の税務顧問、創業支援、融資・補助金・資金繰り、確定申告、相続税の相談に対応しています。

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